「エゴを抑える技術」を読んだ

『エゴを抑える技術』を読みました。
技術というよりは「心得」の方がしっくりくると思いますが、内容は素晴らしかったです。

エゴを抑える技術

エゴを抑える技術

エゴという名の甘美な劇薬

自分自身に関していえば、「エゴが無いわけじゃないけど、それほど傲慢だと思わないし、エゴイストだとは思えないな」とか思っていました。
本書を読むまでは。
エゴにまみれて生きていたのに、「自分が傲慢だと思いたくないし、エゴイストだと思いたくない」と思っていたのです。

本書は、そう言った思い込みもまたエゴであり、いかに自分自身を客観視できなくなるかについて述べられています。
それがいかに強力で、また、自分たちの人生にいかに深く根付いているか。
エゴもまた、我々の人生の一部分であり、決して完全に無くすことはできないと思います。
それでも、エゴをエゴだと認識することや、エゴと共存することは、人生にとって重要なことだと教えてくれます。

以下に、本書のエッセンスを最も濃く含んでいると思われる箇所を引用します。

つまり、立派なビジネスマンに、立派なアスリートに、立派な征服者になろうと思うのは素晴らしいことだ。知識を増やしたい、金銭的に豊かになりたい、そう思うのも自然なことだ。本書でも折にふれて述べたように、大きなことを成し遂げようと思うのはよいことなのだ。むろん私もそう思っている。

ただ覚えておいてほしい。それに負けないくらい、立派な人間に、幸福な人間に、バランスのとれた人間に、満ち足りた人間に、謙虚で利他的な人間になることも素晴らしいことなのだ。いっそ今挙げたことを全部実現してもいい。分かりきったことなのに忘れられがちなのは、こうした人格を磨き上げることで、プロフェッショナルとしての成功もつかめるということだ。逆効果になることはまずない。ふだんから努力して、偏った考え方を改め、自滅的な衝動を抑えることは、きちんとした人間になるための道徳的な条件であるばかりではない。それによって、さらに大きな成功への道が開けるのだ。人間性を磨けば、成功をつかむための危険な船旅を、迷うことなく乗り切ることができる。そもそも、そうした人間性を身につけたこと自体がすでに、恩恵であるともいえるのだ。

素晴らしい内容ゆえにタイトル邦訳が皮肉に映る

本書の原題は、"EGO IS THE ENEMY"(「エゴは敵だ」)ですが、邦訳では「エゴを抑える技術」となっています。
しかし、本書ではテクニックという意味での「技術」はほとんど紹介されていません。 また表紙にはでかでかと「成功者の条件」と書かれています。反論はないのですが、何とも言えない違和感を覚えました。

本を売るためにはある程度キャッチ―なタイトルが必要なのでしょうが、エゴについての本の表紙がなんともエゴに負けて見えるのは皮肉なことです。

「自分はエゴイスティックではない」と思っている人にこそ読んでほしい

本当は自分でも分かっているつもりでした。
「自分はエゴイスティックではないという思い込みこそが、エゴなのだ」と。でも忘れてしまうのです、残念ながら。

スマイルズの『自助論』を読んだ時と同じような、自分自身について再び考える良いきっかけになりました。

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫

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